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第二十九話〜犯人!発見!懺悔!

「雄介君?」
 広い空間に出て、一番最初に見たものは海人さんだった。
「少し休もう。どうせあいつはまだ来ないだろう」
 田中さんがそう言うので、大きな木の根本に座らせる。
 俺が刺した肩からはおびただしい量の出血が確認できた。
 それとついでに手首に、白と黒のコントラストも発見してしまう。
「すいませんでした」
 俺は田中さんの目の前で正座をして頭を地面に付ける。
「いいさ。気にしてないよ」
 田中さんはあっさりと俺を許してくれた。
「さて、なにからはなそう」
 田中さんは少し考えながらゆっくりと言葉を紡ぐ。俺のことはもう興味はないようだ。
「まず私も謝ろう。すまない雄介君、そして皆さん」
 謝るのは俺のはずなのに何故か謝られる。
「次はこれを見てもらいたい」
 周りの反応なんか無視で、田中さんは内ポケットから小さな機械めいた物を取り出す。
「これに見覚えは?」
 全員が見たことがないと首を傾げる。
「爆弾のリモコンスイッチだよ」
 涼しい顔で田中さんはそんな事を言うが周りのみんなは少し距離をとった。
 しかし、よくよく見れば、確かにトイレの中からこんな物を見たような気がする。
「なんでそれを?」
「そんなの決まってるじゃないですか」
 田中さんは微笑みながら恐ろしいことを口にする。
「じゃ、じゃあ、あんたはハイジャックってことか」
 大西は田中さんにつかみ掛かるが、直ぐに手首の白黒の跡を見て後ずさる。
「しかも感染者」
 いつものように詩織が言うが、感染の言葉に過剰に反応するのは、もはやこいつと神条ぐらいしかいないが、二人とも何をしでかすかわからない。
「その通りですよ。私は感染者でハイジャックですよ。」
 田中さんはちょうど感染の印が出ているところをぽりぽりと掻きながら、やっぱり涼しい顔で言う。
「貴様……涼しい顔で言いやがって」
 大西は怒りに震えているが、感染したくないのか震えるだけに留まっている。
「ついでに言うと私があのハイジャックのリーダーです。」
 田中さんは苦笑いをして告白をする。
 しかし、見たことがあるようなスイッチと本人の証言だけでは俺は信じない。
「俺は信じませんよ」
「信じないなら別に良いが、私が嘘を付いてなにになると言うのだい?」
 確かにその通り。ハイジャックだと嘘をついてもなんのメリットもない。
「私がハイジャックだと名乗ったのにはきちんと意味があるんですよ」
 俺の思考を読み取ったのか親切に説明をしてくれる。エスパーかよ。
「死ぬ前に罪の懺悔をしたかったんだよ」
 手当をすればまだ助かるかもしれないと言うのに本人は死ぬ気のようだ。
「私がここにいてもいざこざの種になるしね。それにもう疲れたんだよ」
 そう言うとポケットから拳銃を取り出す。
 自殺、と言うわけか……。
「雄介君。君は約束を守れる人間かい?」
 こめかみに拳銃を押し当てたまま俺に聞いてくる。
「守るようにしてますよ」
 そう言うと田中さんは苦笑いではなく、本当の笑顔を浮かべながら拳銃を俺に向ける。
「確か君は食料を受け取るときになんでも一つ願いを聞いてくれると言ったよね」
「はぁ」
 確かに言った覚えはあるがそれがどうしたと言うのだろうか?
「君は知っているかい?キリスト教では自殺は最も重い罪らしい」
「そうなんですか」
 俺はもう何がなんだかわからずにただ間抜けに返事をする。
「私はこう見えて正義感が強いんだよ。ハイジャックなんかする気はなかったんだか組織の決定は絶対だからね。仕方なかったんだよ」
 田中さんは溜めていたものを吐き出すかのようにペラペラと話続ける。銃を俺に向けたまま。
「だからこれ以上罪を犯したくはないんだ」
 だから俺にどうしろと言うんだ。
「さて、本題だ……私を殺してくれ」
 田中さんは満面の笑みを浮かべながら、俺にそう『お願い』した。
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