第十六話〜四角い青いの
「ちょっと、あんたなにやってんのよ」恭子さんが顔を真っ赤にしながら怒鳴り付ける。
「食っちまったからもうないよー」
そういいながら武内は満足そうな顔をしながら笑っている。
「こいつ,」
それを見た恭子さんは怒りに震えながらこぶしを握り締めながら、今にも殴りかかりそうだ。
「止めときなよ恭子さん体力の無駄だ」
俺は糞まずいジャンクフードを食べながらやめるように言ってやる。、
別に誰が争おうと関係のないことだが、後々面倒そうなのでとめただけだ。他意はない。
「わかったわよ」
なぜか素直に従ってくれる。もっと反発でもするかと思ったが。
「やっぱりまずい」
黄色い長方形の箱に入っていた、青い長方形のジャンクフードを食べながら呟く。
確かこのパッケージに似たカロリー栄養食があったが、それはチョコレートやらフルーツやらチーズなんかまともな味があったと思う。
「雄介君まで勝手に……」
海人さんはなにやら不満そうにぶつぶつ呟いている。
「俺は代わりに田中さんのいうことを一度だけ聞く」
もそもそと青い長方形をほお張りながら田中さんに言う。
「そ、そんなコロリーメイト一箱ごと気で、わるいですよ」
田中さんが恐縮した様子で両手を振っている。
しかし、こうでも言っておかないと海人さんが黙りそうにないので仕方ない。
「ならつかわなけりゃいい」
「それもそうですね」
田中さんは物分りがいい。
「雄介が食べるなら私も」
詩織がいきなりそう言い出しコロリーメイトに手を伸ばす。
「おじいさん一つ貰ってもいい?」
「君はこっちを食べるといい」
そういいながら田中さんはカンパンを差し出しす。
しかし、詩織は首を横に振るり、コロリーメイトに手を伸ばしす。
「いただきます」
丁寧に両手を合わせて一礼をしている。
「お、おい」
俺と田中さんの静止も聞かずにコロリーメイトを食べ始める詩織。
「うわぁまずい」
案の定、詩織は苦虫をかみつぶしたような顔をすることになった。
「だから言ったのに」
俺は苦笑しながら詩織に言う。
「いいもん、全部食べるから」
詩織は俺の言葉に反抗してか無言でコロリーメイトを口に頬張り食べる。勿論、表情はつらそうだ。その光景を見ているとさらに笑みがこぼれる。
「なら私もコロリーメイト一つもらえますかね」
「どうぞ」
海人さんまでがコロリーメイトを進んで食べ始める。
しかし、コロリーメイトなんて製品名がよく通ったものだ。しかも、味が「ポーション味」しかないのは売る気がないのだろうか?
確かに食べたらころりといってしまいそうではあるが、訴えられたりしないのだろうか?
「私も」
この食料の所持者の田中さんも無言でコロリーメイトを食べ始める。
表情はなぜか幸せそうだ。
「わ、私は食わんぞ」
いきなり大西が言い始めた。
「金ならいくらでも出す。出すからカンパンをよこせ」
そう言うと分厚い財布から二、三枚のお札を取り出して田中さんに叩きつけてカンパンを奪い取る。
「最低だな」
俺はコロリーメイトを食べながら呟く。
もはやあきれて誰も注意しない。
「五月蝿い」
議員は必死にカンパンを貪り始めた。
「じゃあ私もジャンクフードでいいわよ」
次に現れたのは恭子さんだった。
「君はこれを食べなさい」
田中さんは今度は恭子さんにカンパンを渡す。
「嫌よあの汚い奴らと同じようにカンパン食べろっての?」
恭子さんは武内と大西を指差して訴える。
「誰もそうは思いませんよ」
田中さんはやさしく微笑みかけてカンパンをさらに差し出す。
「でも」
しかし恭子さんは受け取ろうとしない。
「それに最後のコロリーメイトは神条さんが食べてますしね」
いつの間にか神条がコロリーメイトを音もなく食べている。
いつの間にとったんだ?恐ろしいやつだ。
「だからカンパンを食べてくれないかな」
「でも……」
「気にしなくていいから食べてくれないかな」
「……」
「いいともー」
悩んでいた恭子さんを押しのけて武内がカンパンを取る。
「ちょっとお前! いい加減にしろよ」
恭子さんは即座に立ち上がり武内に拳を振り上げた。
流石にこれは止めないでおいた。