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第十七話〜正義の鉄槌

 こぶしが振り下ろされると同時に武内は後ろに転ぶ。
「きくねー」
 武内は殴られた頬をさすりながら乱れた服装を整え始め、胸元のボタンを止めようとしてなぜか一瞬ギョットしてあわててボタンを止める。
「ちょっとまちな」
 神条さんさんがいきなり立ち上がり武内に歩み寄る。
「な、なんですか?」
 明らかにびびっている。面白い。
「いいから胸元を見せろ」
「なっ何するんですか」
 神条さんさんが乱暴に武内の胸元を見ようとする。
「武内君感染してますね」
 いつの間にかコロリーメイトを食べ終わっていた詩織は厳しい顔でそうつぶやく。
「ほぉよくわかったな詩織」
「それくらい私にだってわかるわよ」
 少し怒ったように詩織は訴えてくる。
「はははそうか」
 そう笑いながら少し考える。あの角度の胸元が見えたのは俺と神条さんだけのはず……なら何故わかった?
「雄介、難しい顔してどうしたの?」
「いや、なんでもないよ」
 俺は難しい顔をしていたようなので顔の緊張をほどき考えるのをやめる。
 そうだ、きっと偶然で見えたんだろうな。そうじゃなきゃ感染しているのなんかわかりっこない。
「止めてくれよ」
 武内もまだ抵抗している。
「うるせぇ。さっさとみせろ」
 こっちもこっちでまだ怒鳴っている。 
「何で誰も止めないんだよ。面倒くさい」
 確かにあんなやくざみたいな人にか関わり合いにはなりたくないだろうな。
 だが五月蝿いだろ。
「神条さん……そこらへんにしきなよ」
 誰も止めようとしないので仕方なく止めに入る。
「何だ酒井てめぇもグルか」
 これだから頭の悪い人は困る。
「好きに思うといい」
 否定するのも面倒だ。
「酒井さん……」
 武内は尊敬のまなざしで俺を見ているが、残念俺は味方でもないし『酒井』でもない。
「おっと武内、勘違いするなよ。俺はお前を救うわけじゃ無い。むしろ逆かな」
「ぇ?」
 武市は間抜けな顔でこっちを見る事しかできないようでぽかんと口を開けたまま動かない。
「見せないってことはやましいことがあるんだよな武内」
 俺は武内に厳しく問いただす。
「な、ないさ」
 声もおかしくなってきている。
「なら見せてみろよ」
「……」
 明らかに武内の顔には焦りの色が見え初めて、額には汗までかき始めた。
「さっさと見せろ」
 また神条さんが怒鳴り始めた。
「すぐに怒鳴るのは頭の悪い証拠だね」
 詩織がいきなりつぶやく。
「ぁ?」
 すぐさま上条さんは反応してくる。
「わーこわーい」
 そう言うと俺で完璧に隠れてしまう。
「厳しいねぇー」
 真正面から不良を見るのはかなり怖いぞ。
「早くしろよ」
 ありがたい事にまだ言っている。気づけよ。
「はぁ……そろそろ気付けよ、見せないということはそういうことなんだろうよ」
 そう言ってやるとひらめいたように顔を上げてから武内を思いっきり見ながら舌打ちをする。ものすごい威圧感だ。
 しかし、やっとそれで納得できたようで武内から離れてくれる。
「で?これからどうしましょうかね雄介君」
 今まで黙っていた海人さんがいきなり息を吹き返す。
「さぁね、みなさんに聞いたらどうですか」
 もう俺は関わりあいたくない。
「そうだね」
 海人さんはそういうとみんなのもとに行き相談を始める。

 相談の結果、多数決で決めることになったようだ。ほとんど海人さんが仕切ってただけのような気もしなくはないが。
 円状にすわり全員の顔が見える。全員の顔が緊張でこわばる中、海人さんが言葉を発する。

「では第一回の多数決を始めます」

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