第四十二話〜正気
輝く太陽、乱反射する水面、跳ぶ水しぶき。すべてが輝くこの綺麗な世界で、雨に打たれたかのようにびしょ濡れになって騒ぐ俺達五人。
「冷たーい」
詩織が水をかけられて、反射的に言った何気ない一言で、ふと我に帰り、まともな事を考える。
びしょ濡れになったままで遊んでいるが、その後はどうするんだ?
まさか、寒さに震えろと?
俺はともかく、詩織にそんな思いをさせてはいけないだろう。
「全く」
計画性のなかった自分を呪いながらも川から上がり、一度シャツを脱ぎ、固く絞って水を出す。
次に、スボンの絞れるところを絞り、裸足のままで今まで歩いていたジャングルへと再び歩いていく。
「全く……」
確か、始めてこの島に来た時にも同じことをしたような気がする。
乾いた木々と適当な燃えそうな物を探す。
「こんなものか」
俺はまた、木の皮を細かくちぎり、ちょうどいい大きさの木と木を擦り合わせて火を起こす作業に没頭する。
俺の努力は見事実り、真っ赤に燃える炎が出来上がった。
「ふぅ」
少しだけ疲れた……。
しかし、火が起きたからよしとしよう。
後は適当な食料を探してくるか。
「わー火だ」
俺が食料探しから帰ってくると、既に火の周りには火に当たる人影が四つ、やはり火を起こして正解だったか。
「しかし、君はライターを知らないのか?」
大西が俺を見て呟く。
「原始人みたいに木をガリガリガリガリやって疲れないのかね」
人が苦労して火を起こしたというのに何と言ういい様だ。
やっぱりこいつは腐ってやがる。
「食料」
俺は近くで見つけられた少量の果物なんかをその場に置いて、今度は、川に向かう。
そんな俺の後ろからは、美味しそうに食料を食べる音がした。
そんな音を聞きながら近くにあった大きめの石を拾い上げ、大きく振りかぶる。
俺の投げた石の作る、飛び散る飛沫と大きな音。
一瞬にして気絶体の出来上がりだ。俺の投げた石で出来た気絶体を回収する。
何度も手頃な石を川に投げ込み魚を取るために奮闘する。
火の近くではみんながじゃれ合っている。
「追加だ」
頑張って取った人数分の魚を火の近くまで運んでから木の枝で串刺しにして地面に立てる。
「調味料は無いけど我慢してくれよ」
俺はその場に座り込んで魚が焼けるのを待つ。
「すまないね雄介君。気付かなかったよ」
「別にいいですよ」
魚が焼けるのを待っていると、今日は詩織ではなくほかの人が寄って来た。