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第三十八話〜幽霊

「おはよう」
「おはようたかし君」
 いつも通り、たかしと挨拶をする俺。
「そんな浮かない顔をしてどうしたんだい」
 俺の浮かない顔を見て、たかしが心配して聞いてきている。
「みんなおかしいんだ」
 俺は眉をひそめてひそひそと話している。
 多分、朝の母のことだろう。
「少なくとも僕は普通だよ」
 胸をはってたかしが言っている。すると俺は嬉しそうに頷いている。
 学校に行って早速たかしの宿題を写している俺。たかしはあらかじめわかっていたかのように準備がいい。と言うか前の夢で宿題をしたのは俺だったかな?
 昔の俺はたいそう落ち着きがなかったようで、授業を聞いているのわからないくらいきょろきょろと周りを見たり、落書きをしている。しっかりしろ、昔の俺。
「礼」
 そんな退屈だった学校の場面が終わる。
 ここからが問題だ。
「行こうかたかし君」
 俺は嬉しそうにたかしを連れて町へと繰り出す。
「あっ」
 歩き始めて数分、俺が横断歩道を指差す。
「まさか本当にいるとは」
 そうたかしがつぶやいている。
「おばあさん。お助けします」
 俺は記憶のとおりにおばあさんを見つけ出し一目散にかけ出している。
 やめろ。そっちに行くな。
 俺はうれしそうにおばあさんの手助けをしている。
「車だー」
 しばらくするとたかしが俺に向かって叫んでいる。
「あばあさんあぶないですよ」
 丁寧に俺は誘導をしている。
 馬鹿、早く逃げろ。
「危ないっ!」
 たかしに突き飛ばされて転ぶ俺、俺のいた場所を黒塗りの車がものすごいスピードで通り過ぎていく。車のナンバープレートが見えた。
 やめろ。もう見たくない。
 次の瞬間には、やっぱり夢のとおりに、たかしは地面にたたき付けられる。
 何とかして見えないように手で目を覆うが、霊体なので透けて見える。目を閉じようにもまぶさすらも透化している
「たかし君!」
 俺は血まみれのたかしを抱きかかえて叫んでいる。
 じきにたかしは動かなくなった。
 やっぱり全部俺のせいだった。
「うわぁぁぁぁ」
 動かなくなったたかしに動揺したのか、俺は大声で叫びながらその場を走って逃げ出した。
 たかしを置いて走る俺、一体何を考えているのだか。
 しかし、この体も結構便利で、走らなくても素早く移動できる。
「はぁはぁ」
 俺が息を切らせながら向かっていたのは、自宅だったようで、涙目になりながら家に進んでいく。
 俺はそんな自分を横目に、俺はあるものを発見する。それは車。しかも黒塗りで、ボンネットもひしゃげている。恐らく事故でも起こしたのだろう。多分自己対象は小さな子供くらい。だがこんな車は俺の記憶にはなかった。これも夢のせいか?
 さて、俺は家に走っていったが、俺の記憶違いでなければもうすぐか……。
 家に入ろう。俺はふわふわと漂いながら家へと向かう。


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