TOPに戻る
前のページ 次のページ

第九話〜新しい朝

「ん……」
 あたりがまぶしいと思って起き上がる。
 まぶしいと思ったらどうやら朝のようだ。
 見ると、体には昨日少女にかけたはずの上着と少女が乾かしていた上着がかけられていた。
「おはよう」
 少女は何をするわけでもなくじっと俺を見ていた。
「おはよう」
 俺が目を覚ましたとわかるとすぐに笑顔で声をかけてくる。
「いい天気ね」
 そんなものみればわかるが天気の話をしたがるのは日本人の特長みたいなものだから仕方がないだろう。
「上着ありがとう」
 そういって少女に上着を返す。
「ここまで運んでもらったしね」
 そう言うと少女は、頬を染めながら顔を背けてしまう。
「眩しい……」
「寝起きだからじゃない?」
「そうかもな」
 本当は笑顔がまぶしかっただけだが。
 確かに、あの四つの爆弾は俺の爆弾ではなかったとは言え、五つのうちの一つは俺のものだ。だから俺も墜落に無関係という訳ではないはず、だからどんな悪夢をみるのかと思っていたが、存外さわやかな朝だ。
「その……なんだ」
 駄目だ。間が持たない。
「三宅 詩織(みやけ しおり)」
 いきなり少女はそう名乗った。
「は?」
「三宅詩織」
 少し怒ったように少女が言う。
「わかったよ三宅ね……覚えておくよ」
 少々少女の怒気に押されてしぶしぶと覚えておくことにする。
「うん」
 詩織は嬉しそうに笑っていた。
 たかが名前ごときでここまで喜ぶか?普通。
 ついでに言うとその笑顔はやめてくれ。俺は自分がロリコンじゃないのか心配になる。
「ところで、三宅さんがいいのかい?三宅ちゃんがいい?」
 体系からして、ちゃんがいいだろうが一応聞いておくことにしておく。
「詩織で」
 帰って来たのは意外な言葉だった。
「呼び捨て?」
「そうよ。ただし私も呼び捨てで呼ぶからね」
 その呼び方では年齢はわからない。まぁどうでもいいか。
「詩織ね、詩織……了解」
「よろしくお願ね。雄介」
 少女、いや詩織はそういうとスッと手を差し延べて来た。
 年下に呼び捨てにされると言うのも複雑な心境だがこの再、気にしないことにする。
「はいはい、よろしくよろしく」
 俺はその手を掴んで握手をした。彼女の手はやたらと冷たかった。いや、単に俺が熱くなっていただけかもしれないが。
「これからどうするの?」
 詩織は少し考えるような仕草をして俺に聞いてくる。
「そうだな、とりあえず飛行機の墜落場所に行こうか。まだ生存者がいるかもしれない」
 それに、きちんとあの議員が死んだかも確認しなければいけない。
「探検ね」
 明らかに的外れの回答をして目を輝かせている。
 そして、なぜかテンションの高い詩織と俺はきちんと俺が一生懸命つけた焚火を海水で一瞬にして消してから茂みの中に入っていった。

第一章完

前のページ 次のページ
TOPに戻る
inserted by FC2 system